思記

よしなしごとをそこはかとなく

ラルンガルゴンパ旅行記①

まえがき

ラルンガルゴンパ(以下ラルン)という場所をご存知だろうか。ラルンは、四川省甘孜藏族自治州の色達郡にあるチベット仏教の僧院である。中国語では五明佛学院と表記される。日本語ではなかなか情報がないので、詳細は以下を参考にしてほしい。

baike.baidu.com

 

標高4000m近い山々の中に広がる紅色の美しい僧院郡は、多くの旅人の憧れである。僕もまたその景色に憧れた一人であり、友人のMくんと共に今夏ラルンを訪れた。その時のことを書きたいと思う。

 

チベットと中国政府は緊張関係にあるため、なるべく新しい情報が必要である。ラルンに行くために多くの先人のブログの情報が参考になった。僕の経験がどこまで参考になるかわからないが、恩返しのつもりで僕の経験を共有したい。また、ラルンに辿り着くまでに多くの方々にお世話になった。きっと彼らはこのブログを読むことはない(そもそも読めない)だろうが、これもまた恩返しのつもりで、彼らについても書きたいと思う。

 

成都からラルンガルゴンパへ

チケットの確保

ラルンへの出発点となる成都に到着したのは2017年6月30日である。僕らはHello Chengdu Int'l Youth Hostelに宿泊した。ここは成都からチベット圏への拠点となる宿で、多くの日本人バックパッカーが利用する。

www.booking.com

ラルンに行く旅人はここでラルンのそばにある色達という町まで行くバスを斡旋してもらうのが一般的である。しかし僕らの時はそれができなかった。なんでも、2016年5月からの外国人規制により、外国人にチケットを売ることもできなくなったという。宿の人たちの雰囲気を見ても、ラルンに行く人にあまり関わりたくないという雰囲気だった。情勢の変化とはかくも早いものなのだ。

 

しかしせっかく成都まで来たのに、こんなところで諦めるわけにはいかない。しつこく食い下がると、スタッフの一人が「バスターミナルでならチケットを運良く買えるかも」と教えてくれた。早速バスを乗り継いでバスターミナルに向かった。

 

バスターミナルにて

バスターミナルに到着すると、まず目に入ったのは真っ赤な看板。「2017年4月1日より身分確認を徹底します」と書かれてあった。ただでさえ可能性は薄いことは理解していたが、この言葉で僕らはバスチケットの購入をほぼ諦めた。しかしせっかくここまで来たので、ダメ元でチケット売り場に行ってみる。すると、外国人はパスポートなどの提示を必ず求められる一方で、現地人は身分証明書をほとんど提示していないことに気づく。これはいけるかもしれない。希望がまた膨らみ始める。旅行中何度も漢民族に間違われて来た自分の容姿が今回も効果を発揮することを祈りつつ、以下のフレーズをなるべくネイティヴっぽく係員に伝えた。

 

「明天上午我们想去色达,要两个票!」

「526块」

「!!!」

 

買えてしまった。ありがとう我が漢民族フェイス。なるべく動揺を面に出さないようにしつつ慌てて購入し、建物を出て、思わずM君とハイタッチ。最初にして最大の難関を超えた喜びから、これはひょっとしてあっさりラルンに辿り着くのではないか?と楽観的な気分になっていた。この時の僕には、この24時間後に本当の難関にぶち当たること、その楽観が権力によって粉砕されることなど知る由もない。

 

次回に続く。